『ゆれる』
【ストーリー】
東京でカメラマンとして成功している猛は母の一周忌で帰省する。彼は実家のガソリンスタンドを継いだ独身の兄の稔や、そこで働く幼なじみの智恵子と再会し、3人で近くの渓谷に行くことにする。猛が単独行動している間に、稔と渓谷にかかる吊り橋の上にいた智恵子が転落する。
*******************************
田舎暮らしに馴染めず東京に出てカメラマンとして成功を収めている猛と父の家業を継ぎ常に人に頭を下げて家を守り続けている兄稔。二人の全く正反対の性格や生活状況がお互いの嫉妬心をかき立てる。
弟は東京で成功しているものの故郷に帰ればはみ出し者として生真面目で働き者の兄と比較されていることにずっと劣等感を抱いている。兄は兄で見た目もよく自由奔放に自分の好きなことを家族というものに縛られず、好きなことで成功を収めている弟に羨望と嫉妬を覚えていた。
表面的には仲がよく、お互いを理解しあっているように振舞っていますが言葉のあちこちや視線、表情などにそんな感情が読み取れました。そして二人の幼馴染の智恵子の存在が二人の見えないライバル心に拍車を掛けていきます。
東京に出て行く前に付き合っていた猛と智恵子。しかし猛が故郷を捨てる時に智恵子はついていけなかった。その智恵子は今稔のガソリンスタンドで働き稔を信頼していた。しかしそれは稔が智恵子に抱いている想いとは違うものだった。智恵子のことに対しても稔が抱く猛への劣等感。猛もまた兄への嫉妬心から何年ぶりかで再会した智恵子を抱いてしまう。そして三人で出かけた渓谷で智恵子のつり橋からの転落死。
近くにいたのは稔。離れたところからその光景を目撃した猛・・・・。
この事件をきっかけに二人の隠された感情がそれぞれの運命を左右していきます。兄をかばい続ける猛が直面していく兄の深層心理と自分の深層心理。そして猛の出した決断・・・・・。
果たしてそれは真実だったのか・・・
数年後、母の残した一本のフィルムが語る兄の姿。
兄弟ゆえに他人以上にもつれてしまった感情が真実の姿を見えなくしていたのか・・・
香川照之の静かで温厚な性格の下に潜む狂気に似た感情表現に見ているほうも真実が分からなくなりました。また、オダギリジョーの都会ずれしてしまった人間ように見える顔の下の複雑な感情など二人の演技に賞賛の拍手でした。
血が繋がっているからこそ行き違ってしまう感情があるけれど、血が繋がっているからこそ取り戻していける信頼もあるはず。そんな思いが残る作品でした。
| 固定リンク
「映画(邦画・洋画等)」カテゴリの記事
- 『天使と悪魔』(2009.06.22)
- 『ルーキーズ~卒業~』(2009.06.05)
- 『グラン・トリノ』(2009.05.25)
- 『ファイト クラブ』(2009.05.12)
- 『レッドクリフ Ⅱ~未来への最終決戦~』(2009.04.27)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
うーん。
実に見たくなる、まさに秀逸なレビュー。
こんなレビューを書いてみたいものです。
(真木よう子のファンなのでそっち方面から絡もうかと思いましたが、やめました(笑)
投稿: ふる | 2007/03/05 22:48
カンヌとか、出てましたっけ?
気になる映画ですね。
でも、オダギリジョーと香川照之ってどう考えても兄弟だとは思えない。
投稿: ゆき | 2007/03/06 22:16
ふるさん、こんばんわ~
コメント入れていただいてありがとうございます。
これはまともに受け取っていいコメントなのかしら・・・
もしそうなら嬉しいけど(*^_^*)
ふるさんは真木ようこファンだったんですね~
あいにく私はあまり知らないので・・・すいません(汗)
投稿: キャサリン | 2007/03/08 00:40
ゆきさん、こんばんわ~
あははは!確かに兄弟にしては違いすぎるかも(笑)
海外はちょっとわかんないけど日本の各映画祭や各賞で監督賞、作品賞、主演男優賞、助演男優賞など総なめにした作品ですね。
秀作だと思いますので機会があったら見てくださいね。
投稿: キャサリン | 2007/03/08 00:46
こんばんわ!コメント&TBありがとです!
「手紙」に似た内容でしたけど、こちらのほうが複雑でしたね!
ただ捕まっちゃうだけでなくて、女性も含まれてますから!しかも兄弟ということもあって、、、。
なんで橋から落ちたのかの真実を追っていく展開がすごく良かったと思います。
非常に切なかったですけど、見ごたえは充分だった用に思えますね!
投稿: あっしゅ | 2007/03/14 00:07
あっしゅさ~ん!こんばんわ~☆
「手紙」はまだ見ていないんですが原作を
斜め読みはしました。
確かに似通った部分があるようです。
「落ちた」のか「落とされた」のか・・・
あの「兄の差し伸べた手が語る真実」に迫っ
ていく部分に引き込まれました。
ほんと、見ごたえのある作品だと思います。
投稿: キャサリン | 2007/03/14 00:29