『うつせみ』
夫によって家に閉じ込められ、抜け殻のような生活を送るソナのもとに、ある日現れた青年テソク。彼は留守宅に侵入しては転々とする生活を送っていた。ソナの悲惨な状況を知ったテソクは、彼女の心を癒そうとソナを家から連れ出し二人はそのまま同じ生活を送り始める。いつしか二人の間には愛が生まれていくのだが・・・・・
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うつせみ(空蝉)とは蝉の抜け殻の事でありこの世を生きる人間のことを指し、そしてまた現実の空しさを比喩した言葉でもありますね。この映画の原題は『空き家』海外版は『3番アイアン』だそうですがこの映画に関しては『うつせみ』という日本語の幽玄さが似合っているように思えるような作品でした。
主人公のテソクには一切のセリフがありません。序盤はテソクが留守宅を探す様子と入り込んだ留守宅で行っていくある作業を黙々と流していきます。何故テソクがそのような暮らしをするようになったのかとか、テソクが何故そのような事を忍び込んだ家で行っていくのかとかの説明も一切ありません。
ソナもまた同じようにソナの過去も一切語られていませんが夫の言動や家にあるパネルや写真集などで大体のことは窺い知る事ができます。彼女もまた最後の最後まで言葉というものを話しません。
住処を持たず淡々と他人の家を渡り歩いていく男と外に出ることもままならず暴力的な夫との生活を死人のように暮らしている女とは全く違う環境を生きているように見えて魂の底にある空しさという接点を持っていたんじゃないでしょうか。
ジェヒは最初に見たのが『わが家』、次が『怪傑春香』とどちらかと言えばやんちゃな役を見てきてのでこの演技はとても新鮮で彼のこれまでにない不思議な感性と演技を見られただけでも見た甲斐がありました。
ソナを演じるイ・スンヨンは『初恋』のヒョギョンのイメージが強く我が儘なお嬢さまの印象があったのですがここでは美しいが陰のある女の役を鮮烈に演じていました。夫にただ黙って暴力を受けてきたソナは弱さの陰に意固地のような強さを見せていましたが、テソクと出会い人に頼れる嬉しさや、見返りもなく人を愛することを知ってからはさらに母性のような優しさや女としてのしたたかさ、強さを身につけどんどん変わっていく様がふとした行動に見て取れました。
しかし常に無言のままの二人の間にしだいと芽生えていく愛情というか強い絆のようなものを表現させたキム・ギドク監督の手腕はすごいと思いました。
テソクが刑務所の中で身につけていく特殊な技術。まるで「しのび」の世界のようだったけど習得していくまでのテソクの表情がとっても不可思議な世界で引き込まれてしまいました。
ラストにいたっては昔むさぼる様に読んでいた『乱歩ワールド』を彷彿させる様な摩訶不思議でありながらこういう常識もありなのかと思わせられるような終わり方でした。
なんともいえない世界観を持っている綺麗な映画です。
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投稿: e-アフィリ | 2006/10/05 17:59